ピアノと児玉博行さん

2009年装飾前のピアノを取材していただいた時の記事

「おらほ」は秋田県内の読売新聞購読者に月2回(現在は月1回)折り込まれる、地域の情報満載のミニ新聞です。 2009年9月20日号にて、私たちの活動を取材していただきました。 それ以来今日にいたるまで毎回、コンサート情報や記事を掲載していただき、ずっと応援してくださっています。
編集・発行の株式会社クリエイティブ・イマージュ児玉博行様よりメッセージをいただきました。

声なき声に耳を傾け寄り添える心

株式会社クリエイティブ・イマージュ
児玉博行

奇跡のピアノストーリーは12年前にさかのぼる―。

今にも廃棄されそうな一台のグランドピアノが、神代小学校の倉庫に置かれていた。
ピアノは「もう私の役目は終わってしまったの?」と淋しそうにささやいた…
きっとそう思う。
会話することのできない無機質なピアノから声なんて聞こえるはずもない。
でも違う。
「ほうら、そっと耳を澄ましてごらん。ピアノのささやきが聞こえるでしょ…」。

目に見えないものにも寄り添える心。声にならない声に耳を傾けることのできる心。

安藤満里さんはじめ音楽を愛する市民有志が、そんなピアノの声なき声に耳を澄まし心の声を聞いてくれた。

「廃棄されてしまうのはもったいない」と市民有志が決起。
キズの目立つピアノに地元の伝統工芸「樺細工」を施し、よみがえらせようとOtoを楽しむ会~古きピアノに樺のアート・プロジェクト〜を結成。

その趣旨に賛同した仙北市出身のテノール歌手・故本田武久さん、ピアニストの鳥井俊之さんらは、チャリティーコンサートを開き資金集めに協力。

調律師の大友佐十郎さん、樺細工職人の高橋正美さんらが心を一つにした。

みなさんの思いの丈がピアノに息吹を吹き込み、よみがえらせる原動力になった。
日々の活動が思いを深くし、思いの深さがやがて想念となった。
その想念に動かされるようにみなさんの活動にもより拍車がかかり、さまざまな人たちの心を揺さぶり奇跡を起こした。

取材(おこがましいですが)とはいえ、みなさんの12年間の活動の歴史の一端にかかわらせていただいたことこそが、私にとってはかけがえのない大きな人生経験の一つになったと思う。
感謝しなければならないのは私の方。
みなさんの12年間の活動にはただただ敬意を表するばかり。

「名も知らない草花のささやきに心動かされるような…、たとえちっぽけな物にでも慈しみの心を持って接することができるような人間でありたい」
と、みなさんの活動を通じて学びを得たような気がする。

みなさんご健康には呉々もご留意され、これからも活動を続けていただけたらと願ってやみません。

2021年10月